単価下落のフードデリバリー、AIとデータ分析したら稼働スタイルが真逆になった話(Uber Eats・クエスト計算)


3〜4km走って¥320。

配達をやっている人なら、この数字を見た時点で「無い」と判断すると思います。私も少し前まではそうでした。画面に出た瞬間に蹴っていた案件です。

その私が今、こういう依頼を進んで取るようになりました。しかも、それで売上が落ちるどころか、ここ数ヶ月で一番の水準まで戻っています。

依頼の中身は何も変わっていません。変わったのは、私の計算の仕方だけです。

今回は、AIと一緒に自分の配達データを分析したら「稼げる」という思い込みが完全に覆り、メインで使うサービスが逆転してしまった話を書きます。

前提:この1〜2年、単価は下がり続けている

私は配達歴3年半のフードデリバリー配達員です。50代、原付二種で走っています。

正直に書きますが、この1〜2年、単価の下落はずっと感じていました。同じ時間・同じ距離を走っても、以前より手元に残らない。

今年の3月頃までは、Uber Eatsの単価がそれなりに良く、私はUberをメインにしていました。ところがその後、Uberの単価が明らかに悪化します。

体感で言うと、1kmあたり¥100という水準です。3kmで¥300そこそこ、5kmで¥500、10km走っても¥1,000。そういう表示が普通に並ぶようになりました。しかも、1kmあたり¥100を切る依頼すら珍しくありません。

つまり「キロ¥100」は良い条件ではなく、それが上限に近いという感覚です。

一方、Uberにはクエスト(一定の件数を達成すると出るボーナス)という仕組みがあります。ただ、これが週によって出たり出なかったりする。毎週内容を確認するのが面倒になり、いつしか私はクエストを見なくなって、画面に表示される単価だけで判断するようになっていました。

ここが後で効いてきます。

ロケットナウに乗り換えた——そして詰まった

そんな時期に存在感が増したのが、ロケットナウでした。

ロケットナウはミッション(Uberのクエストに相当するもの)を出さなくなった代わりに、単価そのものを高めに設定する方式に変わりました。以前はミッションを出していたので、方式そのものが切り替わった形です。つまり、リクエストの画面に出てくる金額の見た目がいい。

「なるほど、こっちの方が明らかに条件がいい」

そう判断して、ここ2〜3ヶ月はロケットナウをメインにしていました。

ところが、ここでジレンマにぶつかります。

  • ロケットナウ:単価はいい。でも鳴り(依頼が入ること)が少ない
  • Uber:鳴りは多い。でも単価が低すぎて取る気にならない

結果、どちらでも件数が伸びない。稼働時間の割に件数が落ちて、売上は下がる一方でした。待機している時間ばかりが増えていく感覚です。

AIに、自分のデータを全部見せた

打つ手が思いつかなくなって、AI(チャット版のClaude)に相談することにしました。

相談するにあたって、見せたデータは2種類です。

  • 自作の日報アプリの画面のスクリーンショット(画面の写真)……日々の売上・稼働時間・走行距離の記録。配達記録用に自分で作ったアプリで、これ自体もAIに作ってもらったものです
  • Uber Eatsやロケットナウのアプリ画面のスクリーンショット……クエストの内容や、報酬の内訳が出ている画面

そして「どちらをメインにすべきか」ではなく、報酬の仕組みそのものを一緒に分解してほしいと頼みました。

ここが結果的に大正解でした。「どっちがいい?」と聞いていたら、たぶん私の思い込みをなぞった答えしか返ってこなかったと思います。

発見:私は「1件の本当の価値」を計算していなかった

分解してみて分かったことは、拍子抜けするほど単純でした。

私は、画面に表示される単価だけを見て、クエストのボーナスを1円も計算に入れていなかった。

クエストのボーナスは、達成した時点でまとめて入ってきます。だから1件1件の画面には出てきません。出てこないから、無いものとして扱っていた。

そこで、クエストのボーナスまで含めた「1件あたりの本当の価値」で計算し直しました。

すると、順位がひっくり返りました。

見た目が最悪だったUberが、クエスト込みの実質単価では、ロケットナウを上回っていた。

面倒だからと見なくなっていたクエストこそが、価値が隠れている場所だったわけです。しかもこれは、隠されていたわけでも何でもありません。アプリを開けば普通に書いてあった。私が見るのをやめていただけです。

学び:面倒だから見なくなったものの中に、価値が隠れていることがある。

クエストは「重なる」——だから1件の価値が跳ね上がる

さらに、クエストは複数種類が同時に重なるということが分かりました。

  • 特別クエスト
  • 週間クエスト
  • 雨クエスト

これらが同じ日に重なることがあります。重なった状態では、1件配達するごとに複数のクエストのカウントが同時に進む。つまり、1件の価値が組み合わせによって大きく変わります。

私は今、稼働前にこれを計算してから外に出るようにしました。やり方は難しくありません。

クエストの総額 ÷ 必要件数 = 1件あたりの上乗せ額

これを、重なっているクエストの分だけ計算して足すだけです。

実際の数字でやってみます。なお、ここから出てくる金額はすべて2026年8月前半の実際のクエストと単価です。クエストの内容は週ごとに変わるので、あくまでこの時点での計算例として読んでください。

  • 特別クエスト:¥3,000 ÷ 12回 = 1件あたり¥250
  • 週間クエスト:¥4,460 ÷ 50回 = 1件あたり約¥89
  • 合計:1件あたり約¥340

この2つが重なっている日は、1件配達するごとに約¥340が上乗せされている計算になります。

さらに雨クエストが出た日は、ここに1件あたり¥350が加算されました。

約¥340 + ¥350 = 約¥690

つまり雨の日は、1件配達するたびに約¥690が別途積み上がっている。この前提で画面の表示額を見ると、景色がまったく変わります。

画面の表示額 実際の価値(雨の日)
¥330 約¥1,020
¥500 約¥1,190

表示¥330の依頼が、実質¥1,000超え。同じ画面を見ているのに、以前の私にはこれが見えていませんでした。

ダブル依頼は、上乗せも2件分

もう一つ、この計算をしてから気づいたことがあります。

ダブル依頼(1回の依頼で2件分をまとめて運ぶ配達)の場合、クエストのカウントも2件分進みます。ということは、上乗せ額も2件分です。

  • 通常の日:¥340 × 2件分 = +¥680
  • 雨の日:¥690 × 2件分 = +¥1,380

例えば、表示額¥600のダブル依頼が来たとします(表示額は依頼ごとに変わるので、あくまで一例です)。

  • 通常の日:¥600 + ¥680 = 実質約¥1,280
  • 雨の日:¥600 + ¥1,380 = 実質約¥1,980

1回の走行で、¥2,000近い価値になる依頼がある。画面には¥600としか出ていないのにです。

まとめると、私が今使っている物差しはこうです。

クエスト稼働中は「画面の表示額 + 約¥340」が、その依頼の本当の価値。雨の日は「+ 約¥690」。ダブル依頼ならその倍。

上乗せ額はその週のクエストの内訳で変わるので、この¥340や¥690という数字自体を覚えても意味がありません。覚えるべきなのは、割り算をしてから稼働に出るという手順の方です。

だから、¥320の依頼を取るようになった

ここで冒頭の話に戻ります。

3〜4kmで¥320の依頼。以前の私なら即・拒否です。

でも、さっきの計算を当てはめるとこうなります。

  • 通常の日:¥320 + 約¥340 = 実質約¥660。3〜4kmで¥660なら、十分に割に合う
  • 雨の日:¥320 + 約¥690 = 実質約¥1,010。¥320の依頼が¥1,000超えに化ける

さらに言えば、クエストの達成には件数が必要です。距離が短く、短時間で終わる依頼は、件数を積むうえではむしろ効率がいい。

つまり、低単価の短距離案件は、避けるべきものから歓迎すべきものに変わりました。

同じ依頼が、計算の仕方ひとつで「ひどい案件」から「おいしい案件」になる。繰り返しますが、依頼の側は何も変わっていません。変わったのは、私の見方だけです。

学び:条件が変わらなくても、測り方を変えると答えが変わることがある。

おまけの発見:週間クエストは「一段下」を選ぶ

もう一つ、AIと計算して確立した選び方があります。

現在のUberの週間クエストは、目標件数を自分で選べる方式です(以前は違う方式でした。この手の仕組みは定期的に変わります)。当然、件数が多い目標ほど報酬も高い。だから私は、最初のうちは「頑張れば届きそうな上の目標」を選んでいました。

ところが、達成後に追加ボーナスが用意されているケースがあります。実際の数字で書くとこうです。

選んだ目標 報酬
50回クエスト ¥4,460
 +10回の追加ボーナス ¥1,720
合計(60回配達した場合) ¥6,180
60回クエスト(最初から選んだ場合) ¥6,180

60回まで走れば、もらえる額は同じです。

違うのは、届かなかったときです。60回クエストを選んで55回で終わった場合、報酬はゼロになります。50回クエストを選んでいれば、55回でも¥4,460は確保できている。

同じ報酬を、より低いリスクで取れる。それなら一段下を選ばない理由がありません。

これは電卓を叩けば誰でも分かる話ですが、毎週内容が変わるものを毎週自分で計算し直すのは、正直しんどい。ここをAIに任せられるようになったのが大きかったです。

結果:メインとサブが逆転した

分析の結果、私の稼働スタイルは真逆になりました。

  • 以前:ロケットナウがメイン、Uberはサブ(というかほぼ使わない)
  • 現在:Uberがメイン。直近の週はほぼUber一本

鳴りが多いUberで、クエスト込みの実質単価で判断して数をこなす。件数も価値も取れる形になりました。

数字で言うと、時給換算がはっきり変わりました。ひどい時は¥2,000を切ることもあり、しかもそれが雨の日ですらそうだった、という状態でした。それが、ここ最近の一番良い時で¥4,400前後まで改善しています。1日平均の売上は約1.6倍。

内訳を見て、一番驚いたのはここでした。戦略転換後のある週は、クエストなどのボーナス(プロモーション)が売上全体の半分以上、約58%を占めていました。

画面に表示される配達料よりも、画面に表示されないボーナスの方が多かったということです。少し前までの私は、売上の主役の方を「無いもの」として扱っていたことになります。

面白かったのは、1〜2年前の「よく稼げていた頃」と比べてみたときです。当時に大きく稼げた日は、そもそも稼働時間が今よりずっと長い日でした。1日の売上だけを並べると当時の方が上に見えますが、時間あたりの水準で見ると、今回の改善で当時とほぼ同じところまで戻っています。

つまり、稼働時間を増やせば、当時のような1日の売上も狙える水準まで回復したということです。単価下落という流れ自体は変えられませんが、その中での戦い方は変えられた、という感覚があります。

副次効果もありました。戦略が数字で見えるようになったので、単純にモチベーションが上がります。「なんとなく今日は走るか」ではなく「今日はこの条件だからこう動く」と決めて出られる。

あと、クエスト選びは週2回のタイミングを決めて習慣化しました。

  • 週末(金・土・日)のクエストは、木曜の夜までに選ぶ
  • 平日(月〜木)のクエストは、日曜までに選ぶ

やる日を決めてしまえば、「そろそろ選ばないと」と気にし続ける時間がなくなります。

AIの役割は、計算代行ではなかった

この一件で一番実感したのは、AIの使いどころです。

計算そのものは、正直、電卓でもできます。私がAIに助けられたのは計算ではなく、「Uberは単価が悪い」という自分の思い込みに気づかされたことでした。

思い込みは、自分では気づけません。だから壁打ち相手が要ります。しかも、自分のデータを見せられて、面倒がらずに何度でも付き合ってくれる相手が。

学び:AIの価値は計算代行ではなく、自分の思い込みに気づかせてくれる壁打ち相手であること。

そしてもう一つ思ったのは、報酬の仕組みが複雑で、しかも頻繁に変わる仕事ほど、AIとの相性がいいということです。仕組みが単純なら自分の頭で足りる。でも、毎週ルールが変わるものを毎週追いかけるのは、人間の側が先に面倒になります。実際、私は一度その面倒に負けてクエストを見なくなり、売上を落としました。

これはたぶん、配達に限った話ではありません。数字が記録として残る仕事なら、同じことができるはずです。

誤解のないように書いておくと、これはどちらのサービスが良い・悪いという話ではありません。Uberにもロケットナウにもそれぞれのルールがあるだけで、その仕組みを読み解いた側が得をする、というだけの話です。今回はたまたま、私が読み解けていなかった側にお金が置いてありました。

まとめ

  • 見た目の単価に騙されていた。「なんとなくの感覚」による判断は、データを見て初めて覆せた
  • 面倒で見なくなっていたクエストの中に、売上の半分以上が隠れていた(ある週はボーナスが売上の約58%。配達料より多かった)
  • 実質単価で見ると、以前なら蹴っていた¥320の依頼が「取るべき依頼」に変わった
  • 週間クエストは、一段下の目標+追加ボーナスの方が、同じ報酬を低リスクで取れる
  • 結果、時給換算は¥2,000を切ることもあった状態から、良い時で¥4,400前後まで改善。時間あたりで見れば、よく稼げていた頃と同じ水準まで戻った
  • 報酬の仕組みが複雑で頻繁に変わる仕事ほど、AIとの相性がいい。数字が記録に残る仕事なら、配達以外でも同じことができるはず

そして、この話には続きがあります。繰り返しになりますが、この記事に出てきた金額はすべて2026年8月前半のものです。クエストの内容は毎週変わるので、この分析は毎週やり直しになる。今週の正解が来週の正解とは限りません。

幸い、やり直すこと自体はもう苦になっていません。決めたタイミングで、AIにその週のクエスト画面を見せるだけです。その毎週の記録も、これから書いていこうと思っています。

単価は自分では変えられません。でも、単価の読み方は自分で変えられました。

それでは、また次の記事で。六弦ライダーでした。


執筆時点の環境:Claude Code(モデルはOpus 5)/2026年8月